Yunomi.Matchaの8月|戸越銀座で見えてきた、これからの抹茶体験
戸越銀座では、8月になる前からお客さんや近所の店によく言われていました。
「8月は閑散期だよ」
「暑くて、あまり人が歩かない」
「8月はお店を閉めるよという団子屋さん」
たしかに、夏の東京は暑い。
カフェという仕事をしていると、天候や気温がそのまま人の流れになることを実感します。雨の日は静かになり、暑さが厳しい日は、街を歩く人も少なくなる。
それでも、2026年8月の戸越銀座は、私たちが想像していたほど静かではありませんでした。
そして、Yunomi.Matchaにとっては、少しずつ店の役割が変わり始めた一ヶ月でもありました。
7月までと、少し違うお客さん
Yunomi.Matchaがオープンしてから7月まで、お客さんの約90%は日本人でした。
ところが8月に入ると、海外から東京を訪れているお客さんが目に見えて増えてきました。
面白かったのは、その多くが「戸越銀座に行きたかったから」という理由ではなかったことです。
「Google Mapsで見つけた」
「ホテルから近かった」
「羽田空港に行く前に寄れるから」
そんな声がありました。
戸越銀座は、東京を訪れる旅行者にとって、最初から必ず訪れる観光地というわけではありません。
だからこそ、Google Mapsで「matcha」「matcha latte」「matcha near me」と検索したときに、見つけてもらう。
ホテルから10分。
東京の街を歩いている途中。
羽田空港へ向かう前の寄り道。
そんな旅行者の動線の中に、Yunomi.Matchaが入り始めていることが分かりました。
目の前で点てる、一杯の抹茶
Yunomi.Matchaでは、目の前で抹茶を点てて、抹茶ラテをつくっています。
初めて来る人にとって、抹茶ラテはもっとも分かりやすい入口です。
ただ甘い抹茶ドリンクではなく、抹茶そのものの香りや苦味、旨味を感じてもらう。
日本茶を扱ってきた私たちにとっては、抹茶ラテも「抹茶を知るための一杯」でありたいと思っています。
そして、店内では抹茶を飲むだけではなく、石臼をひいて抹茶をつくる体験もできます。
茶葉が少しずつ細かな粉になっていく。
普段は完成した状態で見ることの多い抹茶が、どのようにつくられているのか。
石臼を実際に回してみることで、抹茶が少し身近なものになります。
一杯を飲むだけで終わらず、その一杯がどこから来たのかを知る。
それも、私たちがYunomi.Matchaでやりたいことのひとつです。
「抹茶を飲み比べたい」から始まったコース
もうひとつ、8月から試験的に始めたのが、抹茶の飲み比べコースです。
これは、オープン当初からやりたいと思っていたことでした。
お客さんからも、
「抹茶を飲み比べてみたい」
「抹茶によって味は違うの?」
という声をいただいていました。
私自身も何度か社長に相談していました。
最初に出たアイデアは、せっかくやるなら1万円くらいの、本格的な抹茶コースにしてはどうか、というものでした。
それも一つの答えだと思います。
ただ、初めて抹茶を飲む人が、最初から1万円のコースを選ぶのは少し勇気がいる。
もっと気軽に、抹茶そのものの違いを知ってもらう方法があるのではないか。
そこで、まずは小さく始めることにしました。
完成したコースをつくってから提供するのではなく、実際のお客さんに体験してもらいながら、内容や価格、説明の仕方を少しずつ調整していく。
Yunomi.Matchaは、そうやって店の形をつくっています。
一杯のラテから、抹茶そのものへ
これまでのYunomi.Matchaは、どちらかといえば「抹茶ラテを飲む場所」でした。
もちろん、抹茶そのものも販売しています。
ただ、店で抹茶を飲んでもらって、そのまま抹茶を購入してもらうところまでは、必ずしもつながっていませんでした。
そこで考えたのが、
知る。
飲む。
比べる。
好きになる。
そして、持ち帰る。
という流れです。
実際にコースを始めてみると、これまであまり動かなかった抹茶を選ぶお客さんがいました。
「これが好き」
そう言って、その抹茶を購入して帰る。
商品を並べて「買ってください」と伝えるのではなく、まず体験してもらう。
味を知って、自分の好みを見つける。
その先に購入がある。
これは、私たちにとって大きな発見でした。
特にコースを選んでくれたのは海外からのお客さんが多く、日本を訪れた旅行者にとって、抹茶を飲み比べる時間そのものがひとつの体験になっているようでした。
静かな8月だからできたこと
もちろん、「お客さんが少ない」ということは、商売としては喜ばしいことではありません。
ただ、静かな時間があるからこそできることもあります。
お客さんと話す。
どのお茶に興味を持つのかを見る。
どんな説明なら伝わるのか考える。
一杯のドリンクではなく、時間をかけて抹茶について話す。
抹茶の飲み比べは、通常のドリンクよりも時間がかかります。
でも、店内が比較的静かな日には、その時間を急ぐ必要がありません。
お茶を並べて、香りを確かめて、ひとつずつ味わう。
東京の街を歩き続ける旅行の途中で、少し立ち止まって日本茶について話す。
8月には、そんな時間が生まれました。
「閑散期」という言葉だけでは、見えてこない8月です。
一杯目の次に、もう一杯
8月には、新しいドリンクも登場しました。
ひとつは、アサイー抹茶。
アサイーとミルクに抹茶を合わせ、仕上げに紫芋などを使ったグラノーラをのせています。
アサイーのフルーティーな味わいに、抹茶の香りとほろ苦さ。最後にグラノーラの食感が加わります。
抹茶ラテとは少し違うけれど、抹茶を使ったドリンクとして楽しめる一杯です。
もうひとつは、ナーパリラテ。
イアンの思い出、ハワイのナーパリ海岸からイメージしたドリンクです。
ブルーシトラス、ミルク、焙じ茶チャイ、抹茶を重ねています。
グラスの中で、青から白、そして抹茶の緑へと色が重なる。
海と空を思わせるような美しいグラデーションも、このドリンクの魅力のひとつです。
どちらも、抹茶を決まった形だけで楽しむのではなく、もう少し自由に。
日本茶の味わいを残しながら、別の素材やイメージと組み合わせてみる。
伝統的な抹茶を、今の暮らしの中でも楽しめるように。
そんな発想から生まれたドリンクです。
初めて来るお客さんの多くは、まず抹茶ラテを選びます。
目の前で抹茶を点ててつくる、Yunomi.Matchaのスタンダードです。
そして、その一杯を飲んだあとに、
「次はこれを飲んでみたい」
という気持ちが生まれる。
新しいドリンクには、そんな役割もあります。
一杯目を入口にして、二杯目で少し違うものを試してみる。
その小さな変化が、次の来店につながっていく。
Yunomi.Matchaでは、そんな「次の一杯」も少しずつ増やしていきたいと思っています。
9月から、もう少し深く
8月に試したことは、9月から少しずつ次の形へ進めていきます。
抹茶だけをじっくり味わう「おまかせコース」。
4種類の抹茶を飲み比べるコース。
抹茶ラテだけではなく、抹茶そのものに向き合う時間をつくります。
ドリンクでは、秋に向けてスパイス抹茶ソーダ、そして抹茶米糀ラテも予定しています。
どちらも、抹茶を伝統的な飲み方だけに限定するのではなく、もう少し自由に楽しんでもらうための入口です。
抹茶は、苦いもの。
抹茶は、甘いラテにするもの。
そうした決まったイメージだけではなく、香りや旨味、産地や品種によっても違いがある。
その幅を、少しずつ知ってもらえたらと思っています。
Yunomi.Matchaは、まだ完成していない
Yunomi.Matchaは、まだ完成した店ではありません。
どんな人が来るのか。
何を飲みたいのか。
何を知りたいのか。
営業をしながら、お客さんに教えてもらっています。
7月までのYunomi.Matchaと、8月のYunomi.Matchaは、少し違います。
日本のお客さんだけではなく、東京を訪れる海外のお客さんにも見つけてもらえるようになった。
目の前で点てる本格的な抹茶ラテを入口に、石臼をひく体験や抹茶の飲み比べを通して、抹茶そのものを知ってもらう時間が生まれた。
そして、
まず知って、飲んで、好きになる。
その先に、自分の好きな抹茶を持ち帰ってもらう。
そんな流れが、少しずつでき始めています。
戸越銀座の8月は静かと言われる月でした。
けれどYunomi.Matchaにとっては、次の店の形を考えるための、意外と忙しい一ヶ月でした。
東京で抹茶を飲む。
戸越銀座で日本茶に出会う。
抹茶を点ててもらう。
石臼をひいてみる。
いくつかの抹茶を飲み比べる。
そして、自分の好きな一杯を見つける。
Yunomi.Matchaが、そんな場所になっていけばと思っています。